極軸望遠鏡は1960年代に日本の望遠鏡メーカが搭載を始め、その後、海外メーカが模倣したようです(国産市販天体望遠鏡の形成について)。
私が始めて手にした赤道儀はタカハシEM-1、オプションの極軸望遠鏡付きです。北極星の位置を早見板で調べる必要がありましたが、当時小学生であった私でも正確に極軸を合わせることができました。
EM-1の次はEM-200、早見板が不要、可動式のパターンを観測日時に合わせると北極星の導入位置がわかるという優れモノでした。
EM-200の爆発的ヒットの要因の1つはこの極軸望遠鏡だったのではないでしょうか。
さて、このように便利な極軸望遠鏡ですが、弱点があります。それはカビ。
EM-1は箱に入れて押し入れ保管をしていたせいで、気づいた時には極軸望遠鏡の全面にカビが生えてしましました。ただ、カビが生えても北極星を見ることができて実用上は支障ありません。
この経験以降、赤道儀は組み立て保管をするようにしていたのですが、油断していました。NJPとEM-200の2台運用では労力的にも場所的にも組立保管が難しくなり、運搬箱保管になっていました。乾燥剤を入れるようにはしていたのですが気密性のない箱ではすぐに効果が薄れカビが好む環境になっていたようです。
2023年の秋、いつものように北極星を導入する時に黒っぽいシミに気づきました。やられた!
写真のようにシミが発生したのは非稼働側のパターンでした。
機材のページに掲載しましたが、今後のカビ発生抑止のため、運搬用ケースを簡易気密タイプへ更新しました。
さて、パターンに発生したシミは範囲が小さく、極軸合わせには問題ありませんが、できれば除去したいと思い天文ハウスTOMITAさんへ確認しました。
ホームページにも掲載されていますが、極軸望遠鏡の分解清掃は原則メーカ修理となるとの記述があります。冨田さんにお会いする機会があったので伺ってみたところ、部位によってはTOMITAさんでの清掃も可能とのことでした。
すぐに実施する必要もないと思い、一旦はここまで調べて保留しました。
NJPの水準器が破損した際にスターベースへ問い合わせを行いました。その時についでにと考えて、EM-200の極軸望遠鏡のパターン清掃についても問合せをしていました。回答は次の通りです。
タカハシは2024年に赤道儀から撤退し、メンテナンスがいつまで実施可能かわかりません。決して安くはないですが、先延ばしするとやりたくてもできない事態に陥りそうな予感がして、即決、お願いしました。
赤道儀の他にハンドコントローラと電源ケーブルも送るよう指示があったので、それらを一緒に入れました。
赤経、赤緯のクランプは共にフリーにし、運搬中に動いてレバーがぶつかり塗装が剥げたりすることが無いよう、梱包用テープでレバーとハンドコントローラおよび電源ケーブルを固定しました。
赤経、赤緯クランプは運搬中はフリーにする方が良いです。
運搬中は赤道儀に振動が伝わります。クランプを固定していると赤経体または赤緯体へ伝わった振動は→クランプ→ウォームギア→ウォームホイールという形で伝わります。ウォームギアとウォームホイールは外力を受けると変形しています可能性があり、高精度加工されていますのでわずかな変形が命取りになると考えます。
クランプをフリーにしておけば、赤経体または赤緯体へ伝わった振動はウォームギアへは伝わりません。回転方向の力は軸受けの滑りで受け流されます。ラジアル方向の外力が軸受けへ多少加わると思いますが、ウォームギア/ホイールへ伝わるよりは軸受けへ伝えた方が余程マシです。
理由は書いていませんが、スターベース東京のホームページにも赤道儀を送る際に気をつけるポイントとしてクランプフリーにするよう書かれています。
運搬中に段ボール箱の蓋が開いたりすることがないよう、布ガムテープをつかってしっかりと封をしました。
タカハシは、発送に使用した箱や梱包材は原則返ってきません。返して欲しい場合は、事前に連絡しておくことが必要です。
今回、発送に使用した段ボールは購入時のものでしたので、返してもらおうかとも思いましたが、新しい箱の方がいいかなと連絡せずに発送しました。
返送されてから思いましたが、E-200 TEMMMA2Mとシリアルナンバーのラベルは新しい箱にはついていないので、それらが合った方が良いと思う場合は返してもらう方がいいですね。
修理には3~4か月程度(8~9月頃)かかる予定でした。
夏場は夜の天候が安定しないのと夜も暑いのがつらいこともあって、例年オフシーズンです。ただ、1回くらいは観測に行くかもしれないと思い、予備機のEM-200 Temmma2Zと入れ替えました。
予定より約1ヶ月早い7/10に修理完了の連絡がありました。
No.1 | ・極軸望遠鏡の分解清掃 | 41,932円(消費税、ご返送料金込み) |
No.2 | ・NJPリングレベル取付リング | 4,620円 | No.3 | ・赤緯キャップ | 484円 |
No.4 | ・極軸方位調整ハンドルのラバー交換 | 760円(380円×左右2か所) |
--合計-- | 47,796円 |
No.1が今回の依頼、見積もり通りの金額でした。No.2、No.3はついでにお願いした案件です。さて、No.4です。方位微動ハンドのラバーが切れてしまっていたのですが、実は交換用の予備品を既に購入しておりました。まぁまた切れるかもしれないしと思い、このまま支払いました。
修理に合わせて、異常個所がないかのチェックもお願いしておりましたが、異常なしとの見解でした。
赤道儀とご対面。
極望パターンを確認しました。
カビの痕跡はなく綺麗になっています。
あらためて認識しましたが、この極望パターンは20240年まです。あと15年。まだまだのように思いますが、あっという間でしょうか。
タカハシは赤道儀から撤退したので、もうパターン更新は無いのかな。