だるま穴のススメ

2025/11/30掲載

今はアリミゾ/アリガタが主流ですが、だるま穴は1990年代に鏡筒などの脱着を容易化や位置調整を実現するために流行った方法です。
ひと昔前の方法ですが、私はいくつか利点を感じており、いまだに愛用しています。そのおススメポイントを紹介します。

だるま穴とは

fig1

これがだるま穴です。
機械設計の方法の一つで、ボルトの頭より大きな穴をあけて、ボルト締結において脱着を容易化する一般的な方法です。
だるま穴に長穴を組み合わせることで、脱着だけでなく長穴方向に対し位置調整をすることもできます。
この写真では鏡筒と直交方向に長穴をあけていますので、並列同架や接眼部を横向きにした場合のバランス調整に有効です。長穴を鏡筒の軸方向に伸ばせば、鏡筒の前後方向のバランスを取ることができます。


fig2

ε-180ED(黄色い鏡筒)の方に付けているのは、かつてスターベースより販売されていた「ジュラプレートL」でこれも「だるま穴」方式です。


fig3

だるま穴に使用するボルトはこの写真のようにつば付きの六角頭ボルトにしましょう。
つば付きにすることで締め付け面積を増やせます。ワッシャで対応することもできますが、その場合は取付の際にワッシャの下にプレートを滑り込ませるのに苦労しますので、つば付きボルトがおススメです。
天文機材でよく使われている六角穴付きボルトではなく六角頭ボルトにする理由は、鏡筒とプレートの間のわずかなスペースでボルトを締め付けるためです。


fig4

工具はスパナを使います。
手早く締め付けや緩めをするには、この写真のようなラチェット機構付きのスパナが便利です。


fig5

赤道儀には、この写真のように先にボルトを取り付けておきます。
ボルトはプレート厚さ分+α程度突き出した状態にしておきましょう。
(望遠鏡を片づける際に鏡筒を取り外した時のままボルトを外さないというのが、便利だと思います)


fig6

鏡筒を抱えて、だるま穴の大きい穴をボルトの頭にさします。


fig7

次に鏡筒を抱えて、だるま穴の細い長穴の方へ、鏡筒(バンドプレート)をスライドさせます。
だるま穴を鏡筒の直交方向に作ってあれば、左右方向の位置(バランス)調整が、平行方向に作ってあれば、長手方向の位置(バランス)調整ができます。


fig8

スパナでボルトを締めこめば取付完了です。
締め付けは最初はラチェット機構で、最後の本締めはスパナ側でやります。


だるま穴とアリミゾ/アリガタの比較(独断)

比較項目だるま穴アリミゾ/アリガタ
導入費用 安価
(プレートへの穴加工)
高価なものが多い
導入容易性 やや難
(市販品がほとんどない)
容易
(市販品が多数あり)
着脱性 容易
(慣れ必要)
容易
(上から落とし込みできないものは若干やりにくい)
落下危険性 安全
(穴にはまっているボルトを締め忘れても鏡筒が落ちることはまずない)
若干危険
(落下を防ぐ工夫はされているが、落下事故を見聞きする)
重量増 変わらず
(プレートに穴をあけるだけで、新規パーツは不要)
増加
(一般にアリミゾ、アリガタを追加するため増加する)
重心高さ変化 変わらず
(プレートに穴をあけるだけで、重心変化なし)
増加
(一般にアリミゾの厚み分だけ重心が増加する)
バランス微調整のしやすさ できる
(長穴方向には可能ですが、長穴でずらす際の滑りが悪いので若干やりずらい)
やりやすい
(アリミゾ方向には可能で滑りが良くやりやすい)

利点 ⇔ 欠点
利点(顕著) 利点(若干) 欠点(若干) 欠点(顕著)

独断の評価ですが「だるま穴方式」の方が欠点少ないです。導入容易性が若干の欠点で、既存プレートへの追加加工、または新規プレートの製作が必要になります。
ただ、そういう加工を請け負ってくれる業者はあります。ネットで探すといくつか見つかりますが、私がお世話になっているおススメの所をご紹介します。

コスモ工房 https://cosmoway.cocolog-nifty.com/
ほしぞら工房 http://blog.livedoor.jp/starry_workshop/

「アリミゾ/アリガタ」方式について若干の欠点とした「落下危険性」ですが、それなりに落下事故が多く慣れたベテランの方も落下被害にあっていますので、注意が必要と思います。


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