スパイダーの光条合わせ
~反射鏡筒での複数夜撮影におけるテクニック(だるま穴取付)~

2021/11/20掲載

デジタルでの撮影では複数夜にわたる同一天体の撮影が可能になります。反射鏡筒を使っていると複数夜にわたって撮影した画像の光条が合わないのではと悩むことがあるかもしれません。
かつて私もその悩みを持ちましたが、意外に簡単に解決します。その方法を解説します。

光条の位相は何で決まるのか?

fig1

黒線の丸は望遠鏡の視野だと思ってください。その視野には、接眼レンズを外してみれば、十字にはったスパイダーが見えるはずですよね。
光条はこのスパイダーの直角方向へ伸びます。4本スパイダーなら斜め十字や十字に、3本スパイダーなら6方向に伸びる光条として見えます。
星の並びは天の北極に対して決まっています。
カメラを望遠鏡に取り付けて撮影すると、この視野を四角の写野として切り取りますが、望遠鏡に対するカメラの取付角度が変わるとこの写野が回転します。ただ、星の並びに対する光条の位相(回転角度)は変わりません。

そう、複数夜撮影して星の位置で画像を合わせてスタックする処理の場合、光条の位相は、望遠鏡を空に向けた時にスパイダーがどう向いているかで決まっています。
赤道儀を用いた撮影であれば、鏡筒と鏡筒バンドの位相(回転角度)で決まるのです。

カメラを望遠鏡に取り付ける際の角度は、光条の回転角度合わせに関しては無関係で気にする必要はありません。

(左図、タカハシファンとしては斜め十字で書きたいのですが、書いてみたところ、わかりにくいと感じて、南北の十字にしました。私を含め斜め十字好きの方、安心して下さい。斜め十字でも原理は同じです。)

光条の位相を変えない工夫

fig2

鏡筒バンドを使わず、アリガタが望遠鏡に直付けになっているシステムであれば、気にしなくても狂うことはありません。安心してそのシステムで毎晩撮影しましょう。
鏡筒バンドを使っている方は、ここを読んで参考にして下さい。
大事なのは、鏡筒バンドと望遠鏡の取付において位相(回転方向)をずらさないことです。一番完全な解決方法は、鏡筒バンドから鏡筒を外さないことです。
それを実現するには、アリミゾ/アリガタの利用という手がありますが、私は「だるま穴」を使ってます。
だるま穴とは、左の写真の用にボルトの頭より大きな穴をあけて、そこからボルト径が通る細い長穴を延ばしたものです。これであれば、赤道儀からボルトを外さず、鏡筒バンドプレートを赤道儀へ取り付けることができます。

fig3

ε-180ED(黄色い鏡筒)の方に付けているのは、かつてスターベースより販売されていた「ジュラプレートL」でこれも「だるま穴」方式です

fig4

使用するボルトはこの写真のようにつば付きの六角頭ボルトにしましょう。
つばではなく、ワッシャだと取付の際に、ワッシャの下にプレートを滑り込ませるのに苦労します。
また六角穴付きボルトだと、鏡筒の下のわずかなスペースで工具を挿入することが難しくなります。

fig5

工具はスパナを使います。
手早く締め付けや緩めをするには、この写真のようなラチェット機構付きのスパナが便利です。
fig6

赤道儀には、この写真のように先にボルトを取り付けておきます。
ボルトはプレート厚さ分+α程度突き出した状態にしておきましょう。
(望遠鏡を片づける際に鏡筒を取り外した時のままボルトを外さないというのが、便利だと思います)

fig7

鏡筒を抱えて、だるま穴の大きい穴をボルトの頭にさします。

fig8

次に鏡筒を抱えて、だるま穴の細い長穴の方へ、鏡筒(バンドプレート)をスライドさせます。
だるま穴を鏡筒の直交方向に作ってあれば、左右方向の位置(バランス)調整が、平行方向に作ってあれば、長手方向の位置(バランス)調整ができます。

fig9

スパナでボルトを締めこめば取付完了です。
締め付けは最初はラチェット機構で、最後の本締めはスパナ側でやります。

だるま穴とアリミゾ/アリガタの比較(独断)

比較項目だるま穴アリミゾ/アリガタ
導入費用 安価
(プレートへの穴加工)
高価なものが多い
導入容易性 やや難
(市販品がほとんどない)
容易
(市販品が多数あり)
着脱性 容易
(慣れ必要)
容易
(上から落とし込みできないものは若干やりにくい)
落下危険性 安全
(穴にはまっているボルトを締め忘れても鏡筒が落ちることはまずない)
若干危険
(落下を防ぐ工夫はされているが、落下事故を見聞きする)
重量増 変わらず
(プレートに穴をあけるだけで、新規パーツは不要)
増加
(一般にアリミゾ、アリガタを追加するため増加する)
重心高さ変化 変わらず
(プレートに穴をあけるだけで、重心変化なし)
増加
(一般にアリミゾの厚み分だけ重心が増加する)
バランス微調整のしやすさ できる
(長穴方向には可能ですが、長穴でずらす際の滑りが悪いので若干やりずらい)
やりやすい
(アリミゾ方向には可能で滑りが良くやりやすい)

利点 ⇔ 欠点
利点(顕著) 利点(若干) 欠点(若干) 欠点(顕著)

独断の評価ですが「だるま穴方式」の方が欠点少ないです。導入容易性が若干の欠点で、既存プレートへの追加加工、または新規プレートの製作が必要になります。
ただ、そういう加工を請け負ってくれる業者はあります。ネットで探すといくつか見つかりますが、私がお世話になっているおススメの所をご紹介します。

コスモ工房 https://cosmoway.cocolog-nifty.com/
ほしぞら工房 http://blog.livedoor.jp/starry_workshop/

「アリミゾ/アリガタ」方式について若干の欠点とした「落下危険性」ですが、それなりに落下事故が多く慣れたベテランの方も落下被害にあっていますので、注意が必要と思います。


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