MT-200(ニュートン反射鏡筒)スパイダー交換
〜タカハシ製スパイダー取付部の構造〜

2018/12/28完了
(2022/7/20に掲載)
fig3

羽根式スパイダーへの交換検討

スパイダー交換したのは、もう3年も前です。FaceBookには投稿していましたが、今更ながらHPにも記録しておくことにしました。

fig11

私のMT-200はスターベース名古屋にて中古で入手したものです。86年製、初期型のライトグリーン、スパイダーも当然のように丸棒式でした。 丸棒式のスパイダーは羽根式に比べると剛性が弱く、鏡筒に向きによって斜鏡に多少のズレが生じ、光軸がズレるという話があります。 実際、以降に販売されたεシリーズでは羽根式にスパイダーが使われるものが登場し、MT-200でも塗装色が白色に変わった後、途中からは羽根式スパイダーに変わったと記憶しています。


丸棒のスパイダーでもいいやと思って購入したのに、やはり 人は無いものに惹かれるのかなぁ〜、 一度も実戦投入していないのに羽根式への交換欲求を抑えきれず、東京のスターベースへHPより問い合わせをしてみました(2017年11月末頃)。
回答はすぐに得られました。

★スタベ東京からの回答:「羽根式スパイダーの在庫状況を確認してみたのですが、 残念ながら在庫払底で再生産の見込みは無いとの事です。」

補足情報

「スパイダー交換には鏡筒のスパイダー取付穴を広げる作業が必要で、光学系を一度取り外す必要がある。」

タカハシ純正の羽根式スパイダーは丸棒スパイダーに比べて取付部の軸径が太くなっているようです(上記、丸棒スパイダーの写真を見ても取付部の軸径細いです)。羽根式に交換するには、鏡筒の穴をリーマなどで広げる必要があるということでしょうね。

くぅ〜、残念!

天文仲間から海外製のスパイダーが付くよとの情報ももらったのですが、斜鏡をセルから取り外して交換する必要があるようで、敷居が高そうということもあって、一旦、羽根式スパイダーのことはあきらめておりました。


在庫あり情報&注文へ

2018年になってから別件でスターベース名古屋に問い合わせの機会があったので、もう一度聞いてみると
在庫有り!、有償ですが工場で取り付けもやってくれるとの回答が… 店長にダメ元で泣きついてみたら、値引きまでしてもらえたので意を決して頼むことにしました。

2018年8月のお盆休み、名古屋へ帰省のタイミングに合わせてスタベ名古屋へ、この日、夏休み連休前の最終営業日で、夕方閉店前にギリギリ滑り込めました。


納品&羽根式スパイダーとのご対面

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待つこと4か月、2018/12/27に本日出荷になりますとの連絡がスタベ名古屋の店長より到来。
2018/12/28、工場より自宅へ直送で届きました。
元々箱無しの中古購入でしたが、タカハシの新品の段ボール箱に入って到着しました。

タカハシのロゴ入り段ボール、1983年に初めてタカハシ製品を手にした時と同じように、 心が踊りました。


fig2

開けてみると、発砲スチロールの干渉材に囲まれて、まるで新品(に見えた)のようなMT-200が姿を表しました。
ただ、あまりにぴったりはまり込んでいて、鏡筒の胴部分を持ち上げようとしても箱から出てきません。


fig4

しばらく格闘してみた後、あっ!箱を立てればと思いつき、やってみるとあっさりと鏡筒とご対面できました。

もう何年も前に販売を終えた鏡筒の段ボール箱と干渉材を在庫しているタカハシの物持ちの良さにびっくりしました。


fig5

交換した羽根式スパイダーです。

丸棒式と比べる取付部の径も太く、羽根部の剛性も高くなっていて頼もしい。



タカハシ製スパイダー固定部の構造の変遷

fig12

タカハシのスパイダーの変遷比較してみました。

写真は順に丸棒式:Φ6(MT-160、おそらくMT-200も軸径は同じ。手放したため確認できず)、MT-200の羽根式:Φ9.6、ε-180EDの羽根式:Φ15.1です。
順にスパイダー固定部の径が太くなり、スパイダーの剛性が高くなる作りに変わってきています。

fig13

それぞれの締結構造を(一部想像で)書いてみました。

丸棒式はロックナットがなく、スパイダーを鏡筒の両端からメスねじ(鏡筒の外に見える銀色ローレットのつまみ)で引っ張ることでねじが緩まないよう軸力を生じさせています。 しかし、ねじの緩みを防止するため必要以上に強くスパイダーを張る必要があり、おそらくねじも緩みやすいです。

羽根式(旧)では、鏡筒の外から締める銀色のローレットつまみに付けるねじをオスとメスの二重構造にして、そのオスねじにロックナットを付けられるようにしました。
これによりスパイダー両端のねじについて、スパイダーにかける張力とは関係なくロック用の軸力を生じさせることができ、スパイダーの張力を適切にした上にねじの緩みを抑制することができるようになったと考えれます。

羽根式(新)では、スパイダーから伸びるオスねじを極力太くするデザインになりまし、そのねじにはロックナットをつける構造になっています。スパイダーの張力は両端から締めこむオスねじでかけられるようにしています。
つまりスパイダーから伸びるねじがオスとメスの二重構造になっている形です。
これは、羽根式(旧)よりもスパイダーを太くすることが容易なる設計変更だと思われます。


接眼部のオーバーホール・その他

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今回、接眼部のオーバーホールも願いしていました。
ドローチューブを繰り出してみると、真新しいグリースが見え動きも非常に滑らかでした。
実際、ピント合わせの際にもドローチューブのガタつきは感じられず、星像もほとんど動きません。

fig7

こちらは交換した丸棒スパイダーなどの部品です。
これらはしばらくとっておいたのですが、使う予定もないのでヤフオクで売却しました。タカハシ製品は人気あるのでこういう時も助かります。

fig8 fig9
fig10

タカハシはアフターサービスが非常に優秀で、いつも助かります。
もう30年以上の前の製品をいまだに丁寧にメンテナンスしてくれる会社の姿勢がとてもいいです。このあたりは海外メーカーの追従を許さないと思うのですが、値段の高さで海外勢に押されているのが残念です。
今回の費用は値引きのおかげもあって6万円を切る価格でした。

末永く大事に使っていきたいと思います。



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