2021/4/17完成 2022/8/21掲載
2021年に導入した初の冷却CMOSモノクロカメラ(QHY268M)は、鏡筒への取付アダプタを製作して、手差しフィルタボックスで運用しています。
その製作品についてご紹介します。
2009年にデジタル天体写真へ移行してから12年、ずっとデジタル一眼レフを使ってきました。
天体写真を撮影するには冷却CCDの方が低ノイズでモノクロカメラであればさらに高精細な画像が得られることは認識していましたが、デジカメに比べると値段が高く手が出ませんでした。
ただ、冷却CCDより低価格な冷却CMOSカメラが流通するようになり、セール中であったことに我慢できなくなり、ついにQHYCCDのQHY268Mを購入してしました。
QHY268Mはモノクロの冷却CMOSカメラですので、一般的にはフィルタを交換するためにフィルタホイールを使います。ただ、冷却CMOSカメラに加えてフィルタホイールとRGBフィルタまで購入するのは贅沢するぎると感じてしまい、以下のような運用を考えました。
・カラー画像:QHY268MはL画像撮影用とし、カラー画像はデジカメに交換して撮影する
・ナロー疑似カラー画像:QHY268Mの前に手差しフィルタボックスを付けて、Hα、OⅢ、SⅡフィルタを交換する。
この運用を実現するため、鏡筒との接続はデジカメと交換しやすいようEFのメスマウントとし、マウント面〜素子面までのフランジバックをEOSシリーズと同じ44mmにおさめ、間に手差しフィルタボックスを配置するアダプタを作ることにしました。
使えそうなEFメスマウント、手差しフィルタボックスを探して、以下の物を利用することに決めました。
最初はジャンクカメラを購入して取り外して使用することを考えていたのですが、アマゾンで良さそうなものが見つかりました。これであれば、ロックピンも活かせそうです。
(バシュポ) PixcoマクロマウントアダプターCanon EOS EFマウントレンズ-M42スクリューマウントカメラ対応(EOS-M42)
ZWO フイルターBOX Filter Drawer M54
を使うことにしました。
M48(2インチ)フィルタ用で取付部がM54のオス&メス、光路長が20mm(短め)という点が決め手です。
こういった構成を考えました。
(この図は製作を依頼したコスモ工房様へお送りした組図ですので、(ご支給、製作依頼品)をいう補足が入っています。
項目 | 説明 |
---|---|
①QHY268Mプレート(製作品) | QHY268MにM54のフィルタボックスを付けるための変換プレート |
②フィルタボックス | ZWOの2インチフィルタボックス(M54のオス/メス) |
③M54-テーパ変換リング(製作品) | EFマウントの回転位相(画角)を調整するためのテーパオスのリング |
④EFマウント-テーパ変換リング(製作品) | ③に接続してEFメスマウントを取付けるリング |
EFメスマウント | (バシュポ)Pixcoマクロマウントアダプターより取り外したEFメスマウント |
【補足】①と②の間にシムを挟むことで光路長を調整できます。 |
製作品3品の図面作成の過程を紹介します。各部品の図面も公開します。
上記の組図を検討するにあたり、カメラのフランジバックおよび取付の取り合いを調べました。
出典: QHYCCDメーカーホームページ
メーカーサイトに取付部の取り合い寸法が示された図面が公開されており、それを参考に検討しました。
QHY268Mの取付面の純正プレートは厚さが7mmあること、スケアリング調整用の押しねじ(M2.5)があることおよびカメラの端面からCMOS素子面までは7mmであることがわかりました(上記の組図に反映してあります)。
スケアリング調整機構は製作品にも採用することにし、厚さは全体の光路長を確保するため純正より2mm短縮し5mm厚とすることにしました。
ただ、裏面の形状が不明なため、これについてはQHY268Mのカメラが納品されてから調べて作図に反映しました。
QHY268Mの純正プレートを外すとこのような構造でした。
カメラ側はフラットで、プレート側の凸部(迷光防止用と思われます)がはまる溝があります。プレート取付用のM2ネジ穴が6箇所開けられています。
プレート側には、カメラ側の溝にはまる凸部と保護ガラスの結露防止用のエア導入溝(幅4mm、深さ4mm)が設けてありました。
QHY268Mプレートの図面です。
エア導入溝はプレートを薄くしたことに合わせて幅3mm、深さ3mmに変更しました。
QHY268Mプレート図面-C
↑こちらをクリックするとPDF形式の図面をダウンロードできます。
QHY268Mの画角(回転位相)を合わせる(初回のみの調整です)ために、フィルタボックスのM54ねじに直接、EFマウントを取り付けるのではなく、間にテーパ接続構造を設けました。
光路長の制限がありますので、強度面では不安がありますが、凸部が合計5mmの薄いテーパにしました。また、ケラレを嫌って内径もできるだけ大きくしたため、リング厚みも薄いです。テーパ結合時に周囲3箇所から締めるネジは強く締めすぎてリングが変形しないよう注意しています。
M54-テーパ変換リング-A
↑こちらをクリックするとPDF形式の図面をダウンロードできます。
(バシュポ) PixcoマクロマウントアダプターCanon EOS EFマウントレンズ-M42スクリューマウントカメラ対応(EOS-M42)を分解してみました。
M1.6(?)のねじ6本を外すとこのようにEFメスマウント部が外れ、下に板ばねが入ってます。
ロックピンのレバーはラジオペンチで掴んで回すと、このように外れました。
ロックピンのレバーを外すとロックピンが外れます。ロックピンの奥にはコイルスプリングが入っていました。
EFマウントの取付はM2に変更して作図しました。
(M1.6は加工の際にタップが折れやすく加工が難しいため)
ロックピンは分解した部品をそのまま使用しました(ピンの奥にはコイルスプリングも入れます)。
EFマウント-テーパ変換リング-A
↑こちらをクリックするとPDF形式の図面をダウンロードできます。
製作は
コスモ工房
へお願いしました。
今回、細いねじ加工や溝加工があり、かなり無理をお願いして製作してもらました。
出来栄えはいつも通りのしっかりした仕上がりで、問題なく組みあがりました。約1年強使用しておりますがまったく問題なく満足しています。
こちらが製作してもらった3品です。
左から「QHY268Mプレート」、「EFマウント-テーパ変換リング」(組立済)、「M54-テーパ変換リング」です。
これは、「QHY268Mプレート」の裏側です。
迷光防止用の凸部、結露防止用の溝共に綺麗に仕上がっていました。
「M54-テーパ変換リング」をフィルタボックスに取り付けた状態です。
全て組み立てた状態です。
QHY268Mに取り付けた状態です。